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屋根カバー工法とは?仕組み・特徴・葺き替えとの違いを解説

執筆:株式会社 大日本絋産 技術スタッフ

この記事について

本記事は、株式会社 大日本絋産の社内教育資料として作成するとともに、屋根工事について知りたい一般の方にも役立てていただけるよう公開しています。

今回は、既存の屋根を残した状態で、その上へ新しい屋根を施工する「屋根カバー工法」について、基本的な仕組みや工程、葺き替え工事との違い、施工時に確認するポイントを解説します。

既存屋根の上に新しい金属屋根を施工する屋根カバー工法

屋根カバー工法とは

屋根カバー工法とは、既存の屋根を基本的に撤去せず、その上へ新しい防水層や屋根材を施工する屋根改修方法です。

「重ね葺き」と呼ばれることもあります。

既存屋根材を撤去して新しい屋根へ施工し直す「葺き替え工事」と異なり、現在の屋根を下地の一部として活用しながら新しい屋根をつくることが大きな特徴です。

住宅では、既存の化粧スレート屋根などに対して、比較的軽量な金属屋根を施工する方法がよく知られています。

ただし、カバー工法はどのような屋根にも施工できるわけではありません。

既存屋根材の種類、下地の状態、屋根の形状、勾配、新しく使用する屋根材などを確認したうえで、採用できる工法かどうかを判断する必要があります。


カバー工法の基本的な考え方

カバー工法では、古い屋根の上に新しい屋根を重ねます。

そのため施工後は、

既存の屋根

新しく施工する防水層

新しい屋根材

というように、既存屋根を残した状態で屋根全体が構成されます。

工法や製品によって細かな構成は異なりますが、大切なのは「古い屋根の上へ新しい材料を載せれば終わり」という工事ではないことです。

既存屋根が新しい屋根を施工するための状態にあるのか。

新しい屋根材をどこへ固定するのか。

雨水をどのように排出するのか。

棟や軒先、ケラバ、壁際をどのように納めるのか。

こうした内容を確認したうえで施工します。


カバー工法の基本的な流れ

建物や使用する屋根材によって異なりますが、一般的には次のような流れで工事を行います。

既存屋根の状態を確認する。

棟板金など、工事に必要な部分を撤去する。

既存屋根面を確認・清掃する。

必要な下葺き材などを施工する。

軒先やケラバなどの役物を施工する。

新しい屋根材を施工する。

棟や壁際などを納める。

完成状態を確認する。

実際の工程は使用する製品や既存屋根によって異なるため、現場ごとの仕様とメーカーの施工基準を確認します。


既存屋根を残すことが大きな特徴

葺き替え工事との最も大きな違いは、既存屋根材を残すことです。

既存屋根材を全面撤去しないため、撤去する材料の量を少なくできる場合があります。

また、既存屋根を撤去する工程が少なくなるため、工事の進め方も葺き替えとは異なります。

一方で、既存屋根を残すということは、その下にある野地板などを全面的に直接確認できないということでもあります。

ここはカバー工法を理解するうえで非常に重要です。

既存屋根の下地に大きな傷みがある状態で、その上から新しい屋根を施工しても、根本的な問題を解決できない場合があります。

そのため「撤去しなくて済むからカバー工法」という考え方ではなく、現在の屋根の状態を確認したうえで採用できるか判断する必要があります。


カバー工法と葺き替え工事の違い

葺き替え工事では、既存屋根材を撤去します。

そのため、古い下葺き材や野地板などの状態を直接確認し、必要に応じて補修したうえで新しい屋根を施工できます。

カバー工法では、基本的に既存屋根材を残します。

そのため撤去量を少なくできる一方、既存屋根の下にある状態を全面的に確認することはできません。

つまり、

既存屋根を撤去するのが葺き替え。

既存屋根を利用して新しい屋根を重ねるのがカバー工法。

という違いがあります。

どちらが常に優れているというものではありません。

建物の状態によって、適した方法は変わります。


カバー工法が検討される屋根

住宅のカバー工法では、既存の化粧スレート屋根などに対して検討されることがあります。

既存屋根の形状が比較的平滑で、新しい屋根を施工するための条件が整っている場合に採用されます。

一方で、瓦屋根のように大きな凹凸がある屋根では、一般的なスレート屋根と同じ考え方でそのままカバーできるわけではありません。

屋根材の種類によって工法は異なります。

「屋根が古くなったら何でもカバー工法ができる」と覚えないことが大切です。


下地の状態が重要

カバー工法では既存屋根を残すため、特に重要になるのが下地の状態です。

新しい屋根材は、決められた方法によって下地へ固定する必要があります。

もし野地板などが大きく傷んでいたり、固定に必要な強度を確保できなかったりする場合には、カバー工法が適さないことがあります。

また、広い範囲で雨漏りが発生している場合や、下地の腐食が疑われる場合も注意が必要です。

完成後には新しい屋根で覆われてしまうため、工事前の確認が重要になります。


雨漏りしている屋根にもカバー工法はできるのか

雨漏りがあるからといって、必ずカバー工法ができないとは限りません。

しかし、原因を確認せずに上から新しい屋根をかぶせることは適切ではありません。

まず、雨水がどこから侵入している可能性があるのかを確認する必要があります。

屋根材の破損なのか。

板金部分なのか。

下葺き材なのか。

下地まで傷んでいるのか。

壁際など別の部分が原因なのか。

原因や傷みの範囲によって必要な工事は変わります。

カバー工法を行う場合でも、「上から覆えば雨漏りが止まるだろう」と考えるのではなく、既存屋根の状態を確認したうえで判断することが重要です。


新しい下葺き材を施工する

カバー工法では、既存屋根の上に新しい下葺き材を施工してから新しい屋根材を施工する工法があります。

使用する下葺き材や施工方法は、既存屋根、新しい屋根材、採用する工法によって異なります。

既存屋根の上へ施工するため、下葺き材の固定方法についても、その工法に適した方法を確認する必要があります。

屋根材だけでなく、新しい屋根の防水層をどのように構成するのかを理解することが大切です。

下葺き材については、「屋根の下葺き材とは」で詳しく解説しています。


金属屋根が使用されることが多い理由

カバー工法では、新しい屋根材として金属屋根が使用されることがあります。

理由の一つが、比較的軽量な製品が多いことです。

カバー工法では既存屋根を残したまま新しい屋根を施工するため、屋根全体の重量は増加します。

そのため新しく施工する屋根材には、重量も重要な要素になります。

ただし、「金属屋根なら何でもカバー工法に使える」という意味ではありません。

使用する製品がカバー工法に対応しているか、既存屋根との組み合わせや施工条件に問題がないかを確認する必要があります。

金属屋根については、「金属屋根・ガルバリウム鋼板とは」で詳しく解説しています。


屋根の重量が増えることを理解する

カバー工法では、既存屋根を撤去せず、その上へ新しい屋根を追加します。

つまり、施工前より屋根全体の重量が増えます。

新しく施工する金属屋根が比較的軽量であっても、重量がゼロになるわけではありません。

屋根材だけでなく、下葺き材や役物なども追加されます。

そのため、建物の状態や使用する屋根材を確認したうえで工法を検討する必要があります。

「軽い屋根材だから重量は考えなくて良い」ということではありません。


棟・軒先・ケラバの納まりが変わる

新しい屋根材を既存屋根の上へ重ねると、屋根全体の厚みや高さが変わります。

そのため、棟、軒先、ケラバ、壁際なども新しい屋根に合わせて納め直す必要があります。

例えば軒先では、新しい屋根材から流れてくる雨水を適切に外へ排出する必要があります。

ケラバでは屋根端部を適切に納めます。

棟では左右の屋根面を新しい屋根材に合わせて仕上げます。

カバー工法は平らな屋根面へ新しい材料を張るだけの工事ではありません。

端部や取り合い部分まで含めて一つの屋根として完成させる必要があります。


壁際の納まりにも注意する

屋根と外壁が接する部分では、カバー工法によって屋根面の高さが変わることがあります。

そのため既存の板金や外壁との取り合いをそのまま使用できるとは限りません。

新しい屋根材の高さに合わせて、雨仕舞を考えた納まりが必要です。

壁際は雨漏りの原因になりやすい場所の一つでもあります。

単に隙間へシーリングを充填するだけではなく、屋根材、下葺き材、板金、外壁側の防水との関係を考える必要があります。


カバー工法でも雨仕舞が重要

カバー工法であっても、屋根工事の基本は変わりません。

雨水を建物内部へ入れず、適切に外へ排出することが重要です。

新しい屋根材の表面を流れる水。

屋根材の内側へ入る可能性がある水。

棟や谷、壁際に集まる水。

軒先へ到達する水。

それぞれがどこへ流れるのかを考えながら施工します。

「既存屋根が下にあるから多少水が入っても大丈夫」という考え方ではありません。

新しく施工する屋根は、それ自体が適切な屋根として成立する必要があります。


結露についても考える

屋根を二重に構成するカバー工法では、雨水だけでなく、屋根内部の温度や湿度について考える必要があります。

建物の構造や屋根の仕様によっては、結露への配慮が必要になる場合があります。

屋根材の裏側に水分が確認された場合でも、それが必ず外から侵入した雨水とは限りません。

温度差などによって発生した結露である可能性もあります。

屋根材だけを見るのではなく、既存屋根、新しい屋根、断熱、換気など、建物全体の構成を考えることが重要です。


カバー工法のメリット

カバー工法の特徴の一つは、既存屋根を全面撤去せずに改修できることです。

そのため葺き替え工事と比較すると、既存屋根材の撤去や廃材処理を少なくできる場合があります。

また、既存屋根を残したまま工事を進めるため、屋根下地が全面的に露出する工程も少なくなります。

ただし、これらは建物や施工条件によって変わります。

「カバー工法なら必ず工期が短い」「必ず安い」と一律に決めることはできません。

屋根の形状、材料、施工条件などによって工事内容は異なります。


カバー工法の注意点

カバー工法には、既存屋根を残すからこその注意点があります。

最も重要なのは、既存屋根の下を全面的に確認できないことです。

下地に大きな傷みがある場合には、その状態を残したまま新しい屋根を施工することになってしまう可能性があります。

また、屋根の重量が増えることや、屋根面の高さが変わることで、棟や軒先、壁際などの納まりが変化します。

将来、再び屋根を改修するときには、既存屋根と新しい屋根の複数層を扱う必要が出てくる場合もあります。

施工時だけでなく、その後の維持管理まで考えることが大切です。


既存屋根材の種類を確認する

改修工事では、既存屋根に何が使われているのかを確認することが重要です。

特に古い建物では、施工された時期や製品によって材料が異なります。

カバー工法では既存屋根を全面撤去しない場合でも、棟など一部の既存部材を撤去・加工することがあります。

そのため、既存建材の種類を確認せずに工事を始めることは避ける必要があります。

既存屋根が何でできているのか。

どの年代の製品なのか。

どの部分を撤去・加工するのか。

こうしたことを事前に確認します。


カバー工法が適さない場合もある

屋根が古いからといって、必ずカバー工法を選べるわけではありません。

例えば、

既存屋根や下地の傷みが大きい。

新しい屋根材を適切に固定できない。

屋根材の種類が採用するカバー工法に適していない。

屋根形状や勾配が製品の条件に合わない。

建物全体として別の工事方法を検討する必要がある。

といった場合には、葺き替えなど別の工事方法が適していることがあります。

重要なのは、工法に屋根を合わせるのではなく、その屋根に適した工法を選ぶことです。


部分補修で済む場合もある

カバー工法と葺き替え工事は、どちらも比較的大きな屋根改修です。

しかし屋根に不具合があるからといって、必ず屋根全体を改修する必要があるわけではありません。

屋根材の一部や板金の一部に問題があり、周辺や下地に問題がなければ、部分補修で対応できる場合もあります。

一方で、表面だけを補修しても広い範囲で問題が残る場合もあります。

大切なのは、工事方法を先に決めることではなく、問題の原因と範囲を確認することです。


メーカーの施工基準を確認する

カバー工法で使用される金属屋根には、さまざまな製品があります。

製品によって、

対応できる既存屋根。

必要な屋根勾配。

下葺き材。

固定方法。

使用するビスや役物。

棟・軒先・ケラバ・壁際の納まり。

などが異なります。

似たような金属屋根だからといって、すべて同じ方法で施工できるわけではありません。

使用する製品の施工要領を確認し、その屋根が施工条件を満たしているか確認することが基本です。


新人がカバー工法を学ぶときに意識したいこと

カバー工法を初めて見ると、「古い屋根の上に新しい屋根を張る工事」と覚えてしまいがちです。

しかし、それだけでは十分ではありません。

なぜこの屋根はカバー工法ができるのか。

既存屋根の状態はどうなっているのか。

新しい屋根材はどこへ固定されているのか。

新しい防水層はどうなっているのか。

屋根の高さが変わったことで、軒先や壁際はどう納まるのか。

雨水は最終的にどこへ流れるのか。

こうしたことを考えることが重要です。

既存屋根を残す工事だからこそ、「見えなくなる部分を想像する力」が必要になります。

施工方法だけでなく、既存屋根と新しい屋根がどのようにつながって一つの屋根になっているのかを理解することが大切です。


まとめ|カバー工法は既存屋根を活用して新しい屋根をつくる改修方法

屋根カバー工法は、既存屋根を基本的に残したまま、その上へ新しい防水層や屋根材を施工する改修方法です。

既存屋根材を全面撤去しないことから、撤去や廃材処理を少なくできる場合があります。

一方で、既存屋根を残すため、その下にある下地の状態を全面的に直接確認することはできません。

また、新しい屋根を重ねることで重量や屋根面の高さも変わります。

そのため、カバー工法で最も大切なのは「上から新しい屋根を張れるか」だけではありません。

既存屋根の状態。

下地。

新しい防水層。

屋根材の固定。

棟・軒先・ケラバ・壁際の雨仕舞。

屋根全体の重量。

こうした内容を確認し、一つの新しい屋根として成立させることが重要です。

カバー工法と葺き替え工事には、それぞれ異なる特徴があります。

工法を先に決めるのではなく、現在の屋根の状態を確認し、その建物に適した改修方法を考えることが屋根工事の基本です。


執筆者情報

執筆:株式会社 大日本絋産 技術スタッフ|屋根・外装工事担当

新築・改修を含む屋根・外装工事に携わるスタッフが、実務経験と社内教育内容をもとに解説しています。


関連する解説

既存屋根材を撤去して新しい屋根へ施工し直す方法については、「屋根の葺き替え工事とは」で詳しく解説しています。

屋根の葺き替え工事とは →

カバー工法で新しい仕上げ材として使用されることの多い金属屋根についてはこちらをご覧ください。

金属屋根・ガルバリウム鋼板とは →

新しい屋根の防水に関係する下葺き材については、「屋根の下葺き材とは」で解説しています。

屋根の下葺き材とは →

カバー工法でも重要となる雨水の処理については、「屋根工事の雨仕舞とは」もあわせてご覧ください。

屋根工事の雨仕舞とは →


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