屋根工事で使う主な用語|屋根の部位・材料・工法をわかりやすく解説
執筆:株式会社 大日本絋産 技術スタッフ
この記事について
本記事は、株式会社 大日本絋産の社内教育資料として作成するとともに、屋根工事について知りたい一般の方にも役立てていただけるよう公開しています。
今回は、屋根工事の現場でよく使われる用語について、屋根の部位、下地、防水、板金、屋根材、工法などに分けて解説します。
屋根工事を学び始めた方が基本用語を確認するための用語集としてもご利用ください。

屋根工事の用語を覚える前に
屋根工事では、一般の方には聞き慣れない言葉が多く使われます。
棟。
谷。
軒先。
ケラバ。
野地板。
ルーフィング。
雨押え。
役物。
はぜ。
こうした用語を覚えることは必要ですが、名称だけを暗記しても屋根工事を理解したことにはなりません。
重要なのは、
「その部分が屋根のどこにあり、何の役割を持っているのか」
まで理解することです。
また、同じような部材でも、屋根材の種類、メーカー、工法、地域などによって呼び方が異なる場合があります。
実際の施工では、図面や仕様書、使用する製品の施工資料に記載されている名称を確認することも大切です。
屋根の基本的な部位
まずは、屋根そのものを見たときに使われる基本的な名称です。
屋根面
瓦、スレート、金属屋根などの屋根材が施工されている、傾斜した面です。
一つの建物でも複数の屋根面によって構成されている場合があります。
雨水は基本的に、この屋根面を高い場所から低い場所へ流れていきます。
棟
棟とは、屋根面同士が高い位置で交わる部分です。
屋根の頂部に位置し、屋根形状によって大棟や隅棟などがあります。
スレート屋根や金属屋根では棟板金、瓦屋根では棟瓦などを使用して納めます。
大棟
大棟とは、屋根の最も高い位置にある主要な棟です。
切妻屋根などを見ると、屋根の頂部を横方向に通っている部分が大棟です。
単に「棟」と呼ばれることもあります。
隅棟
隅棟とは、寄棟屋根などで大棟から軒先方向へ斜めに下っていく棟です。
複数の屋根面が外側へ折れるように交わる部分になります。
瓦屋根では隅棟にも瓦を使用するなど、屋根材によって納まりが異なります。
谷
谷とは、複数の屋根面が内側へ向かって交わる部分です。
周囲の屋根面から雨水が集まるため、屋根の中でも特に多くの水が流れる場所です。
谷板金などを使用して、集まった雨水を軒先方向へ排出します。
棟と谷は似たように屋根面同士が交わる部分ですが、棟は高くなる部分、谷は低くなる部分と考えると分かりやすくなります。
軒先
軒先とは、屋根の下側で雨水が流れ落ちる部分です。
屋根面を流れてきた雨水は、基本的に軒先から屋根を離れ、雨樋などへ流れます。
屋根工事では雨水の「出口」となる重要な場所です。
ケラバ
ケラバとは、切妻屋根などで、軒先とは異なる側の斜めになった屋根端部です。
横方向から吹き付ける雨や風の影響を受けるため、屋根材や専用役物などで適切に納めます。
下屋 (げや)
下屋とは、建物の主要な屋根より低い位置に設けられた屋根です。
1階部分から張り出した屋根などを下屋と呼ぶことがあります。
外壁と屋根が接する部分ができるため、壁際の雨仕舞が重要になります。
屋根の下地に関する用語
完成した屋根では見えなくなりますが、屋根材を支える下地にも重要な名称があります。
垂木 (たるぎ)
垂木とは、屋根の傾斜方向に取り付けられる構造部材です。
一般的な木造住宅では、棟側から軒先側へ向かって配置され、その上に野地板などを施工します。
屋根全体を支える構造の一部です。
野地板 (のじいた)
野地板とは、垂木などの上に施工され、下葺き材や屋根材を支える下地です。
現在の住宅では構造用合板などが使用されることもあります。
葺き替え工事では、既存屋根材を撤去することで野地板の状態を確認できる場合があります。
桟木 (さんぎ)
桟木とは、屋根材などを固定・支持するために使用される細長い部材です。
使用する場所や屋根材によって役割は異なります。
瓦屋根では、瓦を施工するための「瓦桟」が使用されます。
瓦桟 (かわらざん)
瓦桟とは、瓦を引っ掛けたり固定したりするために屋根面へ施工する桟木です。
瓦の種類や工法に応じて、位置や施工方法を決めます。
防水に関する用語
屋根工事では、完成後には見えなくなる防水層が非常に重要です。
下葺き材 (したぶきざい)
下葺き材とは、屋根材の下に施工される防水材料です。
屋根材の内側へ入った雨水を受け、建物内部へ侵入させず外へ排出する役割があります。
屋根防水を考えるうえで重要な材料です。
ルーフィング
ルーフィングとは、屋根の下葺き材を指して現場でよく使われる言葉です。
アスファルトを使用したものや、改質アスファルト系のものなど、さまざまな製品があります。
「ルーフィング」と一括りにせず、実際に使用する製品と施工方法を確認することが重要です。
雨仕舞 (あまじまい)
雨仕舞とは、建物に降った雨水を内部へ侵入させず、適切に建物の外へ流すための納まりや考え方です。
単に水を止めるだけではありません。
水がどこから来て、どこを通り、どこへ排出されるのかを考えることが雨仕舞の基本です。
防水
防水とは、材料や防水層などによって水の侵入を防ぐことです。
雨仕舞と似た意味で使われることがありますが、雨仕舞には雨水を適切に流して処理するという考え方も含まれます。
屋根板金に関する用語
屋根材だけでは納めにくい場所では、さまざまな板金部材が使用されます。
屋根板金
屋根板金とは、棟、谷、軒先、ケラバ、壁際などに使用される金属製の部材や、その加工・施工を指します。
雨水を適切な方向へ流し、屋根材の端部や取り合い部分を納める重要な役割があります。
棟板金
棟板金とは、主にスレート屋根や金属屋根の棟部分に施工される板金です。
左右の屋根面が交わる頂部を覆って納めます。
表面の板金だけでなく、その下にある固定下地や屋根材との取り合いも重要です。
谷板金
谷板金とは、屋根の谷部分に施工される板金です。
複数の屋根面から集まる雨水を受け、軒先方向へ流します。
雨水が集中するため、屋根の雨仕舞でも特に重要な部分です。
軒先唐草 (のきさき からくさ)
軒先唐草とは、金属屋根などの軒先に使用される板金役物の一つです。
屋根材の端部を納め、雨水を適切に軒先から排出する役割を持ちます。
製品や工法によって名称や形状は異なります。
ケラバ板金
ケラバ板金とは、屋根のケラバ部分を納めるための板金です。
屋根材の端部を保護し、横方向から吹き付ける雨水などが内部へ入りにくいように施工します。
雨押え (あまおさえ)
雨押えとは、屋根と外壁が接する部分などで使用される板金です。
外壁を伝ってきた水や屋根面の水が建物内部へ侵入しないように納めます。
壁際では屋根材、下葺き材、外壁側の防水層などとの関係も重要です。
水切り
水切りとは、流れてきた雨水を切り、建物内部や不要な場所へ回り込ませないための部材や形状です。
屋根だけでなく、外壁や基礎など建築のさまざまな場所で使われる言葉です。
役物 (やくもの)
役物とは、屋根の端部、棟、軒先、ケラバなど、屋根面の一般部分以外に使用する専用部材を指して使われる言葉です。
屋根材メーカーが専用役物を用意している場合もあります。
屋根材本体だけでなく、役物を正しく使用することが屋根を完成させるうえで重要です。
屋根材に関する用語
屋根の最も外側に施工される材料にも、さまざまな名称があります。
瓦
瓦は、日本の住宅で古くから使用されている屋根材です。
粘土を焼成した粘土瓦などがあり、製品や形状によって施工方法が異なります。
化粧スレート
化粧スレートは、セメントなどを主原料として成形された薄い板状の屋根材です。
住宅で広く使用されています。
「スレート屋根」と呼ばれることもあります。
コロニアル
「コロニアル」は屋根材の商品名ですが、現場では化粧スレート系屋根材を指す言葉として使われることがあります。
厳密にはすべての化粧スレートが「コロニアル」というわけではないため、製品を確認することが大切です。
金属屋根
金属屋根とは、鋼板などの金属材料を使用した屋根の総称です。
横葺き、縦葺き、折板などさまざまな種類があります。
ガルバリウム鋼板 (がるばりうむ こうはん)
ガルバリウム鋼板とは、金属屋根材などに使用される鋼板の一つです。
「ガルバリウム屋根」という表現が使われることがありますが、ガルバリウム鋼板は工法名ではなく、屋根材に使用される材料の名称です。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、アスファルトを使用したシート状・板状の屋根材です。
ほかの屋根材と同様に、製品ごとの施工条件や屋根勾配を確認して施工します。
折板
折板とは、金属板を山と谷が連続する形状に成形した屋根材です。
「せっぱん」と読みます。
工場、倉庫、店舗などで多く使用されます。
金属屋根の施工で使われる用語
金属屋根では、屋根材の形状や接合方法を表す独特の言葉があります。
横葺き
横葺きとは、屋根材を軒先と平行する方向へ並べながら施工する金属屋根の葺き方です。
一般的には軒先側から棟側へ向かって施工します。
縦葺き
縦葺きとは、屋根の流れ方向、つまり棟側から軒先側へ向かう方向に屋根材を施工する方法です。
長尺の金属屋根材を使用する工法などがあります。
立平葺き (たちひらぶき)
立平葺きは、縦葺き金属屋根の工法の一つです。
屋根材同士の接合部分が縦方向に伸びる構造となっています。
製品によって形状や施工方法は異なります。
はぜ
「はぜ」とは、金属板の端部を折り曲げ、かみ合わせるなどして接合する部分や方法を指します。
金属屋根や板金工事で使われる重要な言葉です。
はぜ締め
はぜ締めとは、組み合わせたはぜ部分を締めて接合する作業です。
折板屋根などでも、はぜ締め式の工法があります。
適切に接合されているかを確認することが重要です。
折板屋根で使われる用語
折板屋根には、住宅屋根ではあまり使わない部材もあります。
タイトフレーム
タイトフレームとは、折板屋根材を建物へ固定するために使用される金物です。
建物の母屋などへ取り付け、その上へ折板屋根を固定します。
折板屋根を建物へ確実に固定する重要な部材です。
面戸 (めんど)
面戸とは、折板などの凹凸形状によって生じる隙間を納めるために使用される部材です。
棟や軒先などで使用される場合があります。
使用する場所によって求められる役割は異なります。
重ね式
重ね式とは、隣り合う折板屋根材を重ね合わせて接合する方式です。
ボルトなどによって固定するタイプがあります。
はぜ締め式
はぜ締め式とは、隣り合う折板屋根材の端部を組み合わせ、はぜ部分を締めて接合する方式です。
嵌合式 (かんごうしき)
嵌合式とは、屋根材や専用部材をかみ合わせながら施工する方式です。
製品によって固定方法や構造が異なるため、施工資料を確認する必要があります。
屋根改修で使われる用語
既存住宅の屋根工事では、新築とは異なる改修工事特有の言葉も使われます。
葺く
屋根材を施工することを「葺く」と表現します。
瓦を施工する場合は「瓦を葺く」、新しく屋根材を施工し直す場合は「葺き替える」などと使います。
葺き替え
葺き替えとは、既存の屋根材を撤去し、必要に応じて下地を補修したうえで、新しい下葺き材や屋根材を施工する改修方法です。
既存屋根を撤去することで、下地の状態を確認できることが特徴です。
カバー工法
カバー工法とは、既存屋根を基本的に残したまま、その上へ新しい防水層や屋根材を施工する改修方法です。
「重ね葺き」と呼ばれることもあります。
すべての屋根に採用できるわけではありません。
部分補修
部分補修とは、屋根全体を改修するのではなく、不具合がある一部分を補修する方法です。
屋根材の差し替えや板金の補修など、状態によってさまざまな方法があります。
屋根勾配に関する用語
屋根の傾斜を表す言葉も、屋根工事では頻繁に使われます。
屋根勾配
屋根勾配とは、屋根面がどの程度傾いているのかを表します。
雨水の流れや、使用できる屋根材などに関係する重要な条件です。
寸勾配 (すんこうばい)
寸勾配とは、日本の建築現場で使われる屋根勾配の表し方です。
例えば4寸勾配なら、水平に10進む間に高さが4上がる勾配を意味します。
緩勾配 (かんこうばい)
緩勾配とは、比較的傾斜が小さい屋根を表す言葉です。
使用できる屋根材や工法に制限がある場合があるため、製品の施工条件を確認します。
急勾配
急勾配とは、比較的傾斜が大きい屋根を表します。
雨水は流れやすくなりますが、屋根上での作業が難しくなるため、安全面への配慮が特に重要になります。
雨水や不具合に関する用語
屋根の状態を確認するときには、水に関係する言葉も多く使われます。
雨漏り
雨漏りとは、建物外部から雨水が侵入し、本来水が入ることを想定していない建物内部へ到達する現象です。
室内に水が現れた場所と、実際の侵入口が同じとは限りません。
結露
結露とは、空気中に含まれる水蒸気が温度条件によって水滴になる現象です。
屋根内部で水分が確認された場合でも、必ずしも雨漏りとは限らず、結露の可能性も考える必要があります。
腐食
腐食とは、金属などの材料が周囲の環境によって化学的に変化し、劣化する現象です。
金属屋根や板金では、錆などの状態を確認します。
雨樋に関する用語
屋根を流れた雨水は、軒先から雨樋へ送られます。
雨樋 (あまどい)
雨樋とは、屋根から流れてきた雨水を受け、建物の外へ適切に排出するための設備です。
軒樋 (のきどい)
軒樋とは、軒先に沿って横方向に設置され、屋根から流れてきた雨水を受ける樋です。
集水器
集水器とは、軒樋を流れてきた水を集め、竪樋へ送る部材です。
「集水ます」などと呼ばれることもあります。
竪樋 (たておけ)
竪樋とは、集水器などから受けた雨水を地上方向へ流す縦方向の樋です。
現場では名称と場所を一緒に覚える
屋根工事の用語を覚えるときには、文字だけを暗記するより、実際の屋根を見ながら覚える方が理解しやすくなります。
「これが棟」
「ここが谷」
「ここから軒先」
「こちら側がケラバ」
「この下にルーフィングがある」
というように、名称と実際の場所を結び付けます。
さらに、
なぜ谷に板金が必要なのか。
なぜ軒先に雨樋があるのか。
なぜ屋根材の下に下葺き材があるのか。
まで考えることで、単なる用語ではなく屋根全体の仕組みとして理解できるようになります。
新人が屋根用語を覚えるときに意識したいこと
最初からすべての用語を暗記する必要はありません。
まずは、
棟。
谷。
軒先。
ケラバ。
屋根材。
下葺き材。
野地板。
板金。
雨仕舞。
屋根勾配。
雨樋。
といった基本用語から覚えていきます。
現場で分からない言葉が出てきたら、その都度、
「どこの部分か」
「何の材料か」
「何のためにあるのか」
を確認します。
言葉だけを覚えるのではなく、名称・場所・役割をセットで覚えることが重要です。
まとめ|屋根工事の用語は役割まで理解する
屋根工事では、多くの専門用語が使われます。
棟、谷、軒先、ケラバといった屋根の部位。
野地板や下葺き材など、完成後には見えなくなる部分。
棟板金、谷板金、水切りなどの雨仕舞に関係する部材。
瓦、スレート、金属屋根、折板などの屋根材。
葺き替えやカバー工法などの改修方法。
これらの言葉を覚えることは、屋根工事を学ぶ第一歩です。
しかし、本当に重要なのは名称を言えることではありません。
「その部材はどこにあり、何のためにあるのか」
まで理解することです。
屋根工事で使われる言葉は、それぞれ屋根の構造や雨水の流れとつながっています。
用語の意味が分からなくなったときには、このページへ戻り、個別の解説記事とあわせて確認しながら理解を深めていくことが大切です。
執筆者情報
執筆:株式会社 大日本絋産 技術スタッフ|屋根・外装工事担当
新築・改修を含む屋根・外装工事に携わるスタッフが、実務経験と社内教育内容をもとに解説しています。
関連する解説
屋根の各部名称だけでなく、屋根全体がどのような仕組みで構成されているのかについてはこちらで解説しています。
屋根工事で特に重要となる雨水の考え方についてはこちらをご覧ください。
棟板金・谷板金・水切りなどの詳しい役割についてはこちらで解説しています。
屋根の傾斜や寸勾配についてはこちらをご覧ください。
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