屋根工事と外壁工事、きついのはどっち?両方経験した職人の本音。
屋根工事と外壁工事。どちらも長年携わってきましたが、「結局、どっちがきついの?」「どっちの仕事が楽しいの?」と聞かれたら、なかなか答えに困ります。
実際のところ、どちらにも大変なところがあり、どちらにも好きなところがあります。
今回は、屋根と外壁の両方を施工してきた職人として、少し個人的な本音をお話ししたいと思います。
きつさを左右する最大の敵。それは真夏の暑さ。
屋根と外壁、どちらがきついか。
真っ先に思い浮かぶのは、作業内容よりも季節です。
特に真夏。これは屋根も外壁も本当にこたえます。
反対に、冬は意外と悪くありません。
朝一番は寒さで体がカチカチ。最初のうちは動きも鈍いのですが、仕事を始めてしばらくすると体が温まり、だんだん作業の調子が上がってきます。
気づけば暑くなって、上着を一枚、また一枚と脱いでいくことも。
そして、寒い日の工事を終えたあとに飲む、温かい缶コーヒー。
あれは本当に幸せです。(笑)
ところが、夏はそうはいきません。
真夏の屋根。日陰はないけれど、風がある。
真夏の屋根工事で一番つらいのは、基本的に日陰がないことです。
屋根の上に逃げ場はありません。
一度屋根に上がって作業を始めると、仕事に集中するあまり、休憩のために降りることさえ億劫になることがあります。
もちろん、熱中症対策は別の話。
作業時間を区切り、必ず屋根から降りて休憩し、水分補給をします。1リットルの水なんて、あっという間に飲み干してしまいます。
そして、屋根職人なら一度はこんな会話をしたことがあるのではないでしょうか。
「この瓦の上なら、目玉焼きが焼けそうだな。」
実際に焼いたことはありませんが、真夏の屋根材は、それほど熱く感じられるものです。(笑)
ただし、そんな屋根にも一つだけ、ささやかな幸せがあります。
それは、風が通ること。
屋根の上にいると、ふっと気持ちのよい風が吹いてくることがあります。
建物の中で作業する大工さんや、足場のネットに囲まれた外壁職人には、なかなか味わえない瞬間かもしれません。
もちろん、いつも風があるわけではありませんが、真夏の屋根の上では、このひとときが本当にありがたいのです。
外壁職人は、登山家でありマラソンランナー?
では、外壁工事の方が楽なのかというと、そんなことはありません。
サイディングも屋根材と同じように熱を持ちます。
不用意に素手で触れば、「熱っ!」となることだってあります。
そして何より、外壁職人はとにかく歩きます。
サイディングを加工する切り場から、実際に張る場所まで材料を運び、足場を上って施工する。
また切り場へ戻り、材料を加工して、再び足場へ。
これを一日のうちに何度も何度も繰り返します。
ある意味、外壁職人は登山家であり、マラソンランナーでもあるのです。(笑)
屋根と違って、足場のネットなどによって日差しが遮られる場所もあります。
日焼け対策には、少しありがたい環境かもしれません。
ただし、今度は風が通りにくい。
屋根には風があるけれど、日陰がない。
外壁には日陰があっても、風が通らないことがある。
結局、どちらも暑いものは暑いのです。(笑)
ですから、身体的なきつさについては、どちらが上とも簡単には決められません。
では、仕事として楽しいのはどっち?
これは正直に答えると、外壁サイディング工事かもしれません。
理由は、デザインの豊富さです。
「前回はニチハのあの外壁材だったな。」
「おっ、今度はケイミューのこれか。」
そんなふうに、現場ごとに違うデザインや色柄に出会えるのが楽しいのです。
透湿防水シートが見えていた建物に、一枚ずつサイディングが張られていく。
少しずつ外観が整い、やがて一つの建物として完成していく。
そして、完成した外壁に太陽の光が差した瞬間。
これが本当に美しい。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、思わず見とれてしまうことがあります。
そこまで熱心に外壁を眺める人は、あまりいないかもしれません。
でも、私は好きなんです。
だから、ついつい写真を撮りすぎてしまいます。
後になって、本当に必要な施工写真を整理するのが大変になるほどに。(笑)
……いや、やっぱり屋根も好きです。
ここまで外壁の魅力を話しておいて何ですが、屋根 工事もやっぱり好きです。
特に瓦屋根の棟。
そして、瓦・コロニアル・シングル、それぞれの屋根で施工する谷部分。
こうした箇所が、まっすぐ綺麗に仕上がったときの気持ちよさは格別です。
ついついその場で眺めてしまい、写真まで撮ってしまう。
さらに屋根から降りたあとも、地上からもう一度見上げてしまうのです。
もはや、ちょっとしたロマンですね。(笑)
ただ、こうした仕上がりの美しさは、一般の方にはなかなか伝わりにくい部分でもあります。
お客様が完成した屋根を見て、「綺麗になったね」と喜んでくださる。
それだけで十分ありがたいことです。
一方で、施工経験がある人間には、また違った見え方があります。
どこに技術が必要だったのか。
どの部分の納まりを工夫したのか。
まっすぐに見えるこの線を、どれだけ慎重に仕上げたのか。
そうしたことは、完成した姿を見ただけでは分かりにくいものです。
だからこそ、職人同士で仕上がりを眺めていると、一般の方にはなかなか伝わらないところで盛り上がることもあります。
少しマニアックな世界かもしれません。(笑)
建物が完成する、その瞬間を見せたい。
昔から、私が仕事をするうえで大切にしてきた考えがあります。
それは、ただ工事を終わらせるのではなく、完成までの過程も含めて、見ている人の印象に残る仕事をしたいということです。
例えば、秀吉の「一夜城」という有名な逸話があります。
もちろん、実際の歴史の細部には諸説ありますし、現代の住宅工事とはまったく別の話です。
それでも、建物が驚くほど早く形になったとき、人に与える印象には特別なものがあると思うのです。
一般の方からすると、屋根や外壁が仕上がるだけで、建物全体が一気に完成へ近づいたように見えることがあります。
現場で作業していると、ご近所の方や通行人から、
「すごいね、もうできてる!」
そんな声が聞こえてくることがあります。
あれは、職人として本当にうれしい瞬間です。
もちろん、工事は早ければいいというものではありません。
早さばかりを求めて、仕上がりが雑になってしまっては意味がありませんし、安全や必要な施工手順を省くことはできません。
だからこそ、丁寧な仕事を積み重ねながら、材料の扱い方や段取り、作業の進め方を少しずつ工夫してきました。
その結果として、品質を大切にしながら効率よく施工できるようになる。
そして、完成した建物を見た人に驚いてもらえる。
そんな仕事ができたら、職人としてうれしいじゃありませんか。
私にとって、屋根工事も外壁工事も、ただ材料を取り付けるだけの仕事ではないのです。
数年後、たまたま通りかかった家を見上げてしまう。
屋根や外壁の仕事の好きなところは、もう一つあります。
それは、自分が施工に関わった建物が、その後も街の中に残り続けることです。
数年後、たまたま車でその近くを通りかかる。
「ああ、そういえば、この家の工事もしたな。」
そんなふうに、昔の現場を思い出すことがあります。
もちろん、建物はお客様の大切な住まいです。
自分の作品という言い方は少し違うのかもしれません。
それでも、自分の手が関わった建物には、やはり特別な愛着があります。
そして困ったことに、この仕事を長く続けていると、まったく関係のない家の屋根や外壁まで気になってしまいます。
散歩中でも、つい屋根の形や外壁の納まりを眺めてしまう。
道端で知らない家をじっと見上げている姿は、傍から見れば、少々不審者かもしれません。(笑)
職業病というものでしょうか。
結局、屋根と外壁、どっちが好きなのか。
改めて考えてみると、屋根と外壁のどちらが好きかという問いに、簡単には答えられません。
サイディングの豊富なデザインも好きです。
綺麗に仕上がった瓦の棟も好きです。
外壁に光が差した瞬間も、地上から見上げる屋根の美しさも、どちらも好きです。
そして何より、自分たちの仕事によって建物の姿が変わり、その仕上がりがお客様の暮らしの中に長く残ること。
そこに、この仕事の面白さがあるのだと思います。
こうして文章にしてみると、改めて気づかされます。
自分は思っていた以上に、この仕事にこだわりを持ってきたんだな、と。
さて、最初の質問に戻りましょう。
屋根と外壁、きついのはどっち?
どちらもきつい。特に真夏は。(笑)
そして、楽しいのはどっち?
最初は外壁だと答えようと思ったのですが、屋根の話を始めたら止まらなくなってしまいました。
どうやら、結局どちらも好きなようです。(笑)
執筆:株式会社 大日本絋産 スタッフ(屋根現場歴15年以上)
屋根・外壁工事の現場で経験してきた出来事や、職人ならではの仕事の話をご紹介しています。
今回の記事は書いていて 、熱い思いが込み上げてきました。私は相当な建物オタクだったようです(笑) 改めて、自分はこの仕事が好きなんだな、と思いました。
©株式会社 大日本絋産