屋根を知るからこそ。外壁工事で気をつけていること。
外壁サイディング工事をしているのに、私はよく屋根を見ています。
別に、仕事をサボって屋根を眺めているわけではありません。(笑)
当社では屋根工事と外壁工事の両方を施工しているため、私自身も長年、両方の現場を経験してきました。
だからこそ、外壁工事をしているときにも、つい屋根職人の目線になってしまうのです。
「ああ、ここは屋根屋さんも苦労しただろうな。」
「この板金、傷つけないようにしないと。」
「……いや、この板金はもう少しまっすぐ仕上げてほしかったな。」(笑)
今回は、屋根工事を知っている外壁職人として、普段どんなことに気をつけているのか。少し現場の本音も交えながらお話しします。
① 屋根の上に、余計な足跡を残さない。
新築工事の現場は、まだ地面が舗装されていないことも多く、靴の裏には泥や砂がつきやすいものです。
また、リフォーム工事などで地面が舗装されていても、細かな砂や小石が靴裏に付着することがあります。
そのまま屋根に上がれば、屋根材の表面に足跡や擦り傷を残してしまうことがあります。
屋根材によって、その影響もさまざまです。
コロニアルなどの化粧スレートは、表面についた足跡がなかなか落ちないことがあります。
アスファルトシングルでは、歩き方や靴裏の状態によって表面の粒状材を剥げてしまうことがあります。
金属屋根なら、砂や小石による擦り傷にも注意が必要です。
外壁工事で大屋根に上がることはそれほど多くありませんが、下屋がある住宅では事情が違います。
下屋の上やその周辺でサイディングを張り始めることもあり、屋根に上がる必要がある場合には、作業中に何度も行き来することがあります。
そこで大切なのが、靴裏を十分に綺麗にすること。
さらに、屋根上で使用するための適切な靴を別に用意し、必要に応じて履き替えることも有効です。もちろん、屋根上での作業は安全な足場や作業条件を確保することが前提になります。
では、なぜそこまで気をつけるのか。
理由は簡単です。
自分が苦労して仕上げた屋根を、ほかの職人に汚されたら、やっぱり悲しいからです。
屋根職人の気持ちが分かるからこそ、他社の職人が仕上げた屋根も大切に扱いたいのです。
② 雨押え板金・棟・谷は、できる限り傷つけない。
屋根工事には、完成すると何気なく見えるものの、施工に手間がかかる部分がたくさんあります。
例えば、屋根と外壁が接する部分の雨押え板金。
屋根の頂部にある棟。
屋根面同士が交わり、雨水が集まる谷。
こうした部分は、見た目だけでなく、雨仕舞いの面でも重要な箇所です。
屋根工事を経験していると、どの部分に手間がかかっているのか、どこを傷つけると困るのかが分かります。
そのため、外壁工事中に材料や工具を不用意に当てないよう、特に注意しています。
下屋の近くでサイディングを張るときは、雨押え板金にも気を使います。
また、棟や谷の近くを移動する場合には、傷つけやすい部分を避け、安全な作業動線を確保することが大切です。
傷や破損は、見た目の問題だけでは済まないこともあります。
場所や損傷の程度によっては、雨漏りにつながるおそれもあるからです。
せっかく屋根職人が丁寧に仕上げたところを、外壁工事で台無しにしたくはありません。
ただし、ここからは外壁職人として、屋根職人の皆さんに一つお願いがあります。
ちょっと待って。その板金、まっすぐですか?(笑)
屋根と外壁が接する場所では、屋根側の板金などの形状に合わせて、サイディングを加工することがあります。
ところが、その板金が波打っていたり、本来そろっているはずの高さや角度が途中で変わっていたりすると、外壁材の加工が一気に難しくなります。
ここからここまでは、この勾配。
その先は、また違う勾配。
さらにその先でも、もう一度調整。
まっすぐ綺麗に張りたいのに、板金の形状に合わせてサイディングを細かく加工しなければならないのです。
もちろん、建物の形状や屋根の納まりによって、そうした加工が必要な場合もあります。
ですが、単純に板金の施工精度が原因だったとしたら、外壁職人としては少々複雑な気持ちになります。
では、板金の歪みに構わず、サイディングをまっすぐ切ればよいのか。
それも簡単な話ではありません。
不思議なもので、板金と外壁材の線がそろっていないと、見る角度によっては、外壁の方がうねうねしているように見えることがあるのです。
いやいや。
曲がっているのは、そっちの板金なんですけど!(笑)
それなのに、外壁の仕上がりについて指摘されることもあります。
ですから、屋根職人の皆さん。
こちらも屋根を汚したり傷つけたりしないよう気をつけます。
どうか、外壁職人が困らないように、板金も綺麗に仕上げてください。
お互い様ということで、よろしくお願いします。(笑)
③ 難しい雨仕舞いには、屋根職人の苦労が見える。
屋根と外壁の取り合いで、特に気を使うのが雨仕舞いです。
住宅にはさまざまな形状があります。
屋根が複雑に入り組んでいたり、外壁との接点が多かったり、デザイン上の理由で施工が難しくなったり。
そんな場所を見ると、屋根工事を経験している私は、つい考えてしまいます。
「ああ、確かにこれは、こう納めるしかなかったんだろうな。」
屋根材や板金には、それぞれメーカーの施工仕様があります。
建物のデザインに合わせながら、その仕様を守って納めるのは、簡単ではないこともあります。
だからといって、雨漏りが心配だからと自己判断で板金の立ち上がりを大きくしたり、何でもシーリング材で埋めたりすればよいわけではありません。
かえって水の流れや排水経路に影響し、別の問題を生むおそれもあるからです。
そうした場所で外壁職人として意識しているのが、屋根側の防水層と、外壁側の透湿防水シートとの取り合いです。
適切な重ね順や水の流れを確認し、必要に 応じて仕様に適合する防水テープなどを使用しながら、丁寧に下地処理を行います。
現場ごとに条件が違うため、判断が難しい場合には、現場監督や関係者との確認も欠かせません。
屋根職人が苦労して納めた場所だからこそ、外壁側でも、その苦労を無駄にしたくない。
屋根と外壁の両方を知っていることは、こうした場面で特に役立っていると感じます。
④ もし傷つけてしまったら、正直に報告する。
ここまで、屋根 を傷つけないための注意点をお話ししてきました。
ですが、私自身も過去に屋根を傷つけてしまったことがあります。
そのときは、本当に申し訳ない気持ちでした。
「すみません……。」
そんな気持ちで報告し、屋根業者の方に補修のため来てもらいました。
すると、相手の職人さんは、
「全然いいっすよ!」
と、気持ちよく対応してくれたのです。
もちろん、内心では困っていたかもしれません。
自分が逆の立場なら、余計な仕事が増えるのはうれしくありませんから。(笑)
それでも、その対応には本当に救われました。
そして、改めて思いました。
失敗してしまったことは反省しなければならない。でも、それを隠しておくのは、もっとよくない。
傷や破損に気づいたら、すぐに現場監督や関係する施工業者へ報告する。
足場が残っているうちなら、安全な作業環境を確保したうえで補修しやすい場合もあります。
逆に、足場を解体してから発覚すると、補修のために新たな準備が必要になることもあります。
当社でも、ほかの職人さんから正直に破損の報告を受けることがあります。
そんなときは、まず知らせてくれたことをありがたく感じます。
人間ですから、どれだけ注意していても失敗することはあります。
大切なのは、その後どう対応するかだと思うのです。
外壁を張りながら、屋根の異常に気づくこともある。
私は外壁工事をしているときにも、屋根の状態をよく見ています。
新築現場では、屋根が完成したあとも、大工さん、電気屋さん、設備屋さんなど、さまざまな職人が作業します。
そのため、気づかないうちに瓦が割れていたり、板金がへこんでいたりすることがあります。
そうした異常を見つけたら、当社の代表や現場監督、あるいは屋根業者に連絡を入れます。
「ここ、瓦が割れていますよ。」
状況に応じて関係者と連携し、安全に対応できる範囲で応急的な養生を行うこともあります。
自分が傷つけたわけではなくても、気づいた以上は知らせたい。
屋根を見慣れているからこそ、外壁工事中にも気づけることがあるのです。
足場を解体したあと、ラップサイディングが10数枚も……。
最後に、少し忘れられない現場の話を一つ。
以前、新築住宅で、当社の別の職人がラップサイディングを施工したことがありました。
ラップサイディングは、細長い板状の外壁材を重ねて張っていく、独特の意匠を持つ外壁材です。
その現場では、外壁工事が終わったあとに設備工事が入り、後になってラップサイディングに縦方向の割れが見つかりました。
それも、1枚や2枚ではありません。
なんと、10数枚。
しかも、その破損に現場監督が気づいたのは、足場を解体したあとだったのです。
結果として、割れた外壁材を張り替えるために、もう一度足場を設置することになりました。
そして、当社の職人が再び現場に入り、サイディングを張り直しました。
10数枚の張り替えだけでも大変ですが、足場の再設置まで必要になると、なかなかの大仕事です。
当時、私は直接その現場で対応したわけではないため、破損の詳しい経緯までは分かりません。
ただ、この出来事を聞いて、改めて感じたことがあります。
もし足場を解体する前に破損が確認できていれば、もう少し早い段階で対応できたかもしれない。
新築現場では、さまざまな職種の人たちが一つの建物に関わっています。
作業中に思わぬ傷や破損が生じることもあれば、自分の担当ではない場所の異常に気づくこともあります。
だからこそ、何かに気づいたときには、遠慮せずに情報を共有することが大切なのだと思います。
自分が施工した場所だけでなく、ほかの職人が仕上げた場所にも、少し目を向けてみる。
そんな小さな気配りが、結果として現場全体の手戻りを減らすことにもつながるのではないでしょうか。
一つの建物を、みんなで仕上げている。
屋根職人は、屋根を綺麗に仕上げたい。
外壁職人は、外壁を綺麗に仕上げたい。
大工さんにも、電気屋さんにも、設備屋さんにも、それぞれの仕事とこだわりがあります。
けれど、お客様から見れば、完成するのは一つの建物です。
屋根だけが綺麗でも、外壁との取り合いに問題があれば困ります。
外壁だけが綺麗でも、屋根を傷つけてしまっては意味がありません。
私が屋根工事と外壁工事の両方を経験してきてよかったと思うのは、ほかの職人の苦労や、仕事へのこだわりを想像できることです。
自分が頑張って仕上げたところを、大切に扱ってほしい。
それは、きっと誰でも同じです。
だからこそ、ほかの職人が仕上げたところも、大切に扱いたい。
そして、何かあれば隠さずに伝えたい。
屋根も外壁も、最後には一つの建物として完成します。
自分の担当する部分だけでなく、その先まで考えて仕事をする。
そんな職人でありたいと思っています。
……もっとも、雨押え板金がへにょへにょだったときだけは、少し文句を言わせてください。(笑)
執筆:株式会社 大日本絋産 スタッフ(屋根現場歴15年以上)
屋根・外壁工事の現場で経験してきた出来事や、職人ならではの仕事の話をご紹介しています。
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